因美線・姫新線に突きつけられた課題①
こんにちは。
4月11日にJR西日本は「ローカル線に関する課題認識と情報開示について」として、キロあたりの1日平均旅客輸送人員が2,000人未満のローカル線17路線30線区の資料を公表しました。
JR西日本は「地域のまちづくりや線区の特性・移動ニーズを踏まえて、鉄道の上下分離等を含めた地域旅客サービスの確保に関する議論や検討を幅広く行いたいと考えています」としています。
今回JR西日本がリストアップされた路線のうち、美作地域を走る路線は
②姫新線(上月~津山 35.4km)
③姫新線(津山~中国勝山 37.5km)
④姫新線(中国勝山~新見 34.3km)
と、津山線以外はすべて対象にあげられています。
しばらくこのブログでは美作の鉄道について自分なりに調べたことなどを書いていきたいと思います。
今回はJR西が示したキロあたりの1日平均旅客輸送人員についてのデータを考察しますす。以下の数値は、各線区の2019年度と1987年度のものです。順番は2019年度の数値が低い順に列挙しています。
①因美線(智頭~東津山) 1987年度1551人→2019年度179人(11.5%)
②姫新線(中国勝山~新見)1987年度702人→2019年度306人(43.6%)
③姫新線(上月~津山) 1987年度1527人→2019年度413人(27.0%)
④姫新線(津山~中国勝山)1987年度1364人→2019年度820人(60.1%)
減少割合は因美線が極めて大きく約9分の1まで減り、姫新線(上月~津山)も4分の1近くになっています。
この要因は明確です。関西・岡山方面から鳥取・倉吉への交通手段(俗にいう陰陽連絡)のメインルートから外れたということです。
1987年当時は急行みささ・みまさか(大阪〜鳥取・中国勝山)1往復、急行砂丘(岡山~鳥取・倉吉)4往復が姫新線・因美線を走っていました。すでに姫新線はハイウェイバス(大阪~津山)と競合していたため役割を失いつつありましたが、米子自動車道・鳥取自動車道も開通していなかったため、因美線の役割はそれなりにありました。当時急行砂丘号が4往復運転されていたことからもそのことがうかがい知れます。
しかし、1994年に智頭急行が開業すると砂丘号は廃止(急行つやまになり区間短縮後廃止)され、因美線・姫新線は凋落。さらに米子自動車道・鳥取自動車道の開通が追い打ちになり現在にいたります。
次に2018年度に廃線になった三江線の1987年度と2016年度の輸送人員の数値を比較で紹介します
※三江線(江津~三次)1987年度458人→2016年度83人
三江線の数字をみると、少し安堵の表情を浮かべる人もいるかもしれません。
「因美線でもダブルスコア」とか・・・
しかし余談は許しません。
JR西日本は2020年度の数値も出しています。
②姫新線(中国勝山~新見)132人
③姫新線(上月~津山)346人
④姫新線(津山~中国勝山)663人
2020年度はどの線区も数字を落とし、因美線や姫新線(中国勝山〜新見)は三江線の数字に近づきました。特に2020年度は姫新線(中国勝山~新見)が大きく数字を落としました。おそらくは、勝山高校や新見高校などの生徒の通学がコロナの影響で休校や部活動の制限・保護者の送迎への切替えで減ってしまったことが要因なのでしょうか(地元ではないので憶測です)。そうであれば2021年度の数字もリカバリが難しいかもしれません。
ちなみに芸備線とともにJR西日本が今年に入って地元自治体への協議を申し入れたJR大糸線(南小谷~糸魚川)の輸送密度は2019年度102、2020年度は50でした。
JR西日本の長谷川社長は4月13日の記者会見で今回公表した収支については「経営状況を共有し、理解を得るためだ」「廃線を念頭に置いていない」と強調しました。
ただこの言葉も額面通りには取れないほどの経営状況にあることも事実です。
鉄道は本来公共財です。ヒト・モノ・カネいずれも大都市に集中し、地方との格差が拡大したもとで国・自治体はどう支えるのか。主権者として私たちはどう考えるのか大事だと思います。