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名列車だった急行砂丘号

こんにちは。岡山DCキャンペーンのひとつとして、8月11日に25年前に廃止された急行「砂丘」号のリバイバル運転がされることが話題になっていますね。

岡山から智頭までの区間運転ですが、当時を知るものとしては嬉しい限りです。

 

急行砂丘号は因美線津山線を経由して走っていた急行列車で、もっとも多く運転されていた時は5往復もありました。

なお、岡山県内の停車駅は美作加茂・津山・亀甲・弓削・福渡・金川・岡山でした(一部通過する列車含む)。

 

この列車が元気に走っていた頃は、現在廃止の危機に瀕している因美線も陰陽連絡線の役割が与えられており、タブレット交換の必要性から多くの駅に駅員が配属されていて活気がありました。

 

津山線でも、高速化工事の前にも関わらず、現在でも行っていない津山ー岡山間をノンストップ運転で59分で結ぶという離れ技をやってのけています。

 

実を言うと、自分は砂丘号には2度しか乗ったことはありません。急行列車に乗るのって乗車券の他に急行券を買わなきゃいけなくて、やはり特別でした。

そして、いざ乗った時の思い出としては、ナイロン性のヘッドカバーがついている普通列車よりちょっとだけ良さげなクロスシートに座って、通過する駅を眺めながらやっぱり早いなぁって…。そんな思い出もあり今日は急行砂丘について書きたいと思います。

 

●まず、急行砂丘号のかんたんな歴史を列挙します。

 ・1960年 岡山⇄上井(現在の倉吉)と中国勝山間に設定された準急「ひるぜん」が運転開始

 ・1962年に鳥取⇄宇野を結ぶ準急「砂丘」として設定。山陰と四国を結ぶ列車としての役割も与えられる。

 ・1966年に国鉄の制度改正(営業距離100キロを超える準急は急行にする)で急行に格上げとなる。

 ・1972年新幹線岡山開業に合わせて、3往復に増発。運転区間は岡山⇄上井・鳥取となり、陰陽連絡急行としての役割が強化

 ・1977年現在の上皇夫妻と天皇陛下がインターハイのために岡山ー津山間を乗車

 ・1985年4往復に増発。うち1往復は岡山〜津山をノンストップで走り、1時間を切るスピード運転を実施。丸形の専用ヘッドマークが登場する

 ・1988年半室グリーン車登場

 ・1989年急行みささ号廃止に合わせる形で5往復に増発

 ・1994年ヘッドマークをダイヤ形に変更

 ・1997年11月28日 砂丘号廃止(急行つやま1往復に)

 

●愛され要素その1 最後まで残った「タブレット交換」

因美線では電気信号による列車の行き違いの安全確保ではなく、タブレットと呼ばれる円盤状の金属を持っているものしか線路に立ち入れないという「タブレット閉塞」の方法を残していました。そのため、列車の交換が可能な駅ごとで駅員と連携してタブレットを交換しながら走行しなければいけませんでした。急行列車で最後までタブレット交換が行われたのはこの砂丘号だったのです。

鳥取行きの砂丘号では因美線内は津山からタブレット交換のために運転士が2人体制となって運転されました。

94年に鳥取から智頭までのタブレット交換は行われなくなりましたが、東津山ー智頭間では高野、美作河合、那岐で通過しながらタブレットの投げ入れと受け取りをする光景が見られました(美作加茂駅は停車して駅員と直接タブレット交換をしていました)。

なお、タブレット交換の際、鳥取の運転士は腕で直接タブレットを受け取るのに対して、津山の運転士はケガ防止のため列車に付いていたタブレットキャッチャーという道具を使用していました。(手元にある鉄道ジャーナルの表紙に写っているのはたぶん鳥取の運転士ですね)

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●愛され要素その2 イラスト付きヘッドマーク掲示と専用塗装

1985年から砂丘号は急行列車としては珍しく、イラスト付きのヘッドマークを付けて走りました。初代は鳥取砂丘の風紋を模したイラスト。

その後鳥取砂丘ラクダを描いたダイヤ形のヘッドマーク。当時は急行といえば同じ顔ばかりだったのでヘッドマークがついただけで嬉しかったです。

車体の色も鳥取の海や梨をイメージしたエメラルドグリーンと薄い紫をまとった専用カラーに塗られて古いなりにも特別感をアピールしていました。

 

●愛され要素その3 異彩を放っていた半室グリーン車

急行砂丘は、運行開始直後からそれほど長い編成で走ることはなく、基本編成は4両でした(客が多い日はよく2両ほど増結していました)。JRになって編成は3両に短縮。その際グリーン車をなくすことがないように車両の改造が施され、当時は唯一半室グリーン車のある急行として走っていました。現在では全国で多くの特急で半室グリーン車が走っていますが、その先駆けのような存在でした。ちなみにこのグリーン車。ビジネス客には好評でしたが、地元の人はほとんど乗りませんでした(だって指定席料金より高いんだもん)。

 

他にも急行みささ号との併結運転や津山の弁当屋が車内販売をしていたことなどありますが、また別の機会に書きたいと思います。